空




ファイル6「人身事故にするぞ!」☆

自動車事故の被害者としての経験をお持ちの方で、多少やんちゃなご気性の方は、
このタイトルでピンとくるのでしょう。自動車物損事故で当方の過失が少ない時に、
相手がなかなか過失割合で折り合いをつけてくれない時のコロシ文句。
「病院に行って人身事故にするぞ!そしたらお前の免許も財布もただでは済まんぞ!」
怪我をしてるなら届出云々の前に病院へ行くべきですし、人身事故にするべきですから、
交渉の道具になんてしてはいけませんが、実際昔は有効なコロシ文句でした。

ある日、お客様から事故の連絡。
「渋滞最後尾に止まっていたら、後ろのトレーラーが転回し、その際 オーバーハングで自車のリアゲートを粉砕された。」
ここまではよくある事故。当方には過失0につき、本来は出番無し。でも問題はこの後。
相手のトレーラーの運転者が、損害を支払ってくれない。助けて欲しい。

え、それはひどい。相手方担当保険代理店の連絡先を聞いたので連絡する。
何故、保険会社でなくて代理店なんだろう???と

相手方保険代理店がおどおどしながら、「すみません。対物保険に入っていないんです。」
「別にいいですよ。現金で実費を払ってください。」
「そ、それが・・・ よかったらいっしょにきてくれませんか?」

何かイヤな予感がする。こちらの契約者に、とりあえず病院に行くよう示唆。
「なんでもいいから、事故だ、といって病院に行って!」
診断書を作成してもらって受領。それをもって相手の自宅へ。

同行の相手方代理店のおどおどした様子に納得。自宅に着くと、土建業のお屋敷。
応接間に通されるが、運転者=社長とその両脇に屈強そうな寅壱ウエアの兄ィが二人、腕組みをして立っている。

「俺はそいつにぶつかっていねぇ。」
いきなり、こいつはおかしい。とっとと正面突破だ。見積もり書を取り出して(60万)
「いえ、ぶつかってますよ。この金額を支払ってください」

「俺はやってないと言っとるだろうが!」
(声が荒らぐ。ここで負けられない。隣で先方の代理店は蒼白。)

「わかりました。では、この診断書を鈴鹿警察に提出します。お仕事に触るかもしれませんがよろしいですね」

脅し返してしまった・・・ヤバイか・??

と、一転してウソのように、
「わかった。払う。小切手でええか?」
と小切手登場。銀行渡りを確認して礼を言って帰る。

使わなかった診断書をお客さんの前で開封。
なんと、「異常なし。」とだけ書かれている。
それって、診断書!?提出してたらえらい事だった・・・

わずか数日後。その契約者の紹介元の会社社長から、

「あなた、よくあの事故で修理代満額とってくれたねぇ。すごいね。怖くなかったの?」
「いえ、仕事ですから。」
「あの人、新聞載ってたでしょ。殺人で。すごいね。あなたから保険入ってて安心だよ。」

え、何ですって!?

帰宅して新聞の事件事故欄を読む。
「土建業の社長、ガソリンと木刀を持って元請の会社社長を襲撃。仕事のトラブルか。撲殺の上ガソリンをかけて放火。」

診断書に続く二度びっくり状態。
思わずインターネットで防弾防刃チョッキの購入を検討してしまいました。

さて、この話、ここからが本題。ここで大活躍のコロシ文句、現在は全く使えません。

最近の話。

某所で自動車同士の事故。結構激しい事故だったので、相手はとりあえず病院で検査。
明瞭に打撲もあり、全治2週間。
物損事故の示談は双方車両保険加入につき、順調に推移、決着。
相手は病院に通院したものの、仕事が忙しく警察へ人身事故の届出が出来ない状態。
これでは、任意保険が人身事故部分の対応をしてくれない。
どうしたものか、と調べていると、妙な項目にぶちあたる。

「警察へ届出が出来ない場合の自賠責保険の請求について」
おや、人身事故の届出が無くても自賠責保険は支払うケースがあるらしい。
自賠責保険の支払いが得られないから任意保険は動かないというルールなのに?

あれ?

で、保険会社に照会する。営業担当社員のコメント。
「人身事故の届出無しで任意保険の人身事故対応?出来るわけ無いですよ。今頃何を言ってるんですか!」

そうだよね。俺もそう習ったよ。ついでに「保険金お支払いの手引き」にも、
「人身事故のお届けが無い場合、保険金をお支払いできない場合がございます・・・」

ん?なんか微妙な言い回し。

損害調査担当に聞いてみる。以下実話。

「あの、(上記ケースで)保険金って、支払うの?」
「・・・支払ってます。  今は・・」
「え、今は、てことは、昔はダメだったでしょ?だから、人身事故を取り下げてもらったら、治療費はお客さんに医療費は実費で払ってもらってたじゃない!?」
「ええ。つい、先日から通達がありまして、今はお支払いを・・・」
「!そんな大事な変更、聞いてないよ!」
「ていうか、それって俗に言う不払いでは!?」
「・・・はい。(小声)でも、今調査中の不払いとは別問題でして・・」
「公表されていない、と言うことですか?」
「(さらに小声)はい。私の口からはこれ以上は・・・」

と言うわけで、現在、(昨年の夏以降)示談アドバイスの流れが変わりました。
「人身事故にせずにおいてやるから、治療費と慰謝料現金で持って来い!」といった脅かしには、
全く屈する必要はなくなりました。物損事故の届出で、人身事故のフル対応を保険会社も
やってくれます。それまでと違って。
この問題の不払い事案、実証は極めて困難なのですが、
一日も早く保険会社が切腹して対応してくれる事を祈っています。

 











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